英国ホスピスコラムで行き場の無い患者さんという記事があり、ホスピスに入院している患者さんで、症状が安定して退院できる状態なのに、家族は引き取らない、ナーシングホームへの転院を紹介すると、お金がかかるものだから拒否し、結局その患者さんは行き場が無い話が紹介されていた。
イギリスもオーストラリアもホスピス、或いは緩和ケアユニットは、2週間を目処とした短期の入院施設、症状のコントロール、レスパイトケア、ターミナルケアで入院し、症状が安定すれば退院、レスパイとの期間が終われば退院、或いは死亡退院という事になる。長期の療養施設ではない。
私の勤務するユニットでも、イギリスでの様なケースがしょっちゅうある。緩和ケアユニットに入院中は自己負担一切無い。症状が安定して、もうユニットに入院する必要はなくなっても、家族がもうこれ以上は家でケアできないとかいう場合である。その場合は、長期療養型の施設に移ってもらう事になる。それに対して、患者さん、家族からの抵抗があり、問題になることが多い。やはり、お金がかかるという事がかなり大きな原因になっているように思われる。
放浪医者日記で米国のナーシングホームの費用について書かれていたが、アメリカほどではないにしても、オーストラリアもこうした施設に入るにはお金がかかるようになってきた。
かつては、入所金も無く、年金の85%を支払えば、それだけでホステルで、或いはナーシングホームで余生を送る事ができた。
でも、人口の高齢化に伴い、これでは国の財政がパンクすると、ナーシングホームやホステルのベッド数を政府が管理し、入所も高齢者ケアアセスメントチーム(Aged Care Assessment Team-ACAT)によってアセスメントの基準に達したものだけが入れるようにし、在宅ケア(Home and Community Care Program-HACC)をすすめ、可能な限りは在宅でという政策を推し進めてきた。
オーストラリアの長期療養型の施設には、ナーシングホーム(24時間看護を必要とする人のための施設)と、ホステル(多少の援助があれば自立した生活ができる人のための施設)がある。
65歳以上で高齢者年金受給者の一日の料金は約29ドル、高齢者年金は2週間で約490ドルだから、その85%を支払う事になる。
だったら悪くないじゃないと思うかもしれないが、これ以外に、入所時に支払うボンド(Accommodation Bond)がある。これはその人の資産の査定をして、それに応じて課せられるものである。お金があればあるほど高額のBondを払わなければならない。根こそぎ財産を持っていかれるような感じだが、33,000ドルだけは残して、それ以上の財産に対してBondを請求される。これは、取られっぱなしでは無く、そこを退所したり、死亡した場合、何年そこに入所していたかによって、規定の額を差し引かれ、残りが払い戻しされる。
例えばA氏がホステルに入る事になった。
A氏は持ち家がああり、そこには奥さんが住んでいる。
奥さんはここに長く住んでいるので、この家は資産査定の対象に入らない。
しかし、株とか貯金とかで80,000ドルある。
これは夫婦の資産なので二人で分けると、Aさんの資産は40,000ドルとなる。
従って、Aさんは40,000ドルから33,000ドルを引いた差額の7000ドルをボンドとして支払う事になる。
Aさんは、3年後に、そこを出た。
そこのホステルの一年間についての差し引き額(Retention amount)は、1,530ドルだったので、3年間分の4590ドルが差し引かれ、Aさんには2410ドルが払い戻しされる。
立派なお家があり、一人暮らしで家も資産査定の対象になると、ボンドは莫大な額になる。家は立派でも、貯金が無ければ家を売ってボンドを支払うお金を作るとか、或いは家を担保にお金を借りてボンドを支払う。
親の遺産を当てにしている子供たちにはショックな話である。死後はお金が戻ってくるのだけれども…。それが嫌で、親の家に移り住んでという手段もあるが、この場合はその子供なり、一家が収入が無く、政府からの援助に頼っており、なおかつそこに5年以上住んでいることが条件になる。或いは、入所の前に、ケアのために移り住んでいる人が収入が無く、政府からの援助で生活しており、そこに過去2年以上住んでいる場合も家は資産査定の対象からはずされる。
高額のボンドを払った人は、ホステル、ナーシングホームの一日の料金も割高になる。ボンドの額が、122,500ドル以上だった人、或いはお金があって高齢者年金の需給対象にならない人(Self Funded Retiree)、こういう人の一日の料金は35.69ドルとなる。
持ち家も無い、資産もない、こういう人はボンドを払う必要は無い。ケアの内容に差がつけられるわけでもない。
老後のためにせっせと働いて貯金をして、そんな人は割の悪い対応を受けるシステム…、アリさんよりは、キリギリスでいた方がこの国では楽なようだ!
しかし、全てのキリギリスが遊びほうけていたわけではないし、全てのアリさんが勤勉だったからお金があるわけでもないし、私みたいな真面目な中間層の庶民が一番不公平な目にあうのか…
こういう社会だからか、ナースの同僚の中にも、老後の事など考えず、海外旅行とかで飛び回ってる人もいる。そのくせ、今月の光熱費払うお金が無いとか…
そんなに心配しなくったって、この国では飢え死にする事は無いわよ、政府が面倒見てくれるって…だって
お気楽オージー、これだからこの国は今一なんだよと思いつつも、それがこの国のいいところでもあったり…
最後、すっかりテーマから外れてしまいました(笑)
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