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積極的安楽死に関する議論

先日、オーストラリアのテレビ局の一つ、SBSInsightという番組でLast rights(最後の権利)というテーマで積極的安楽死に関する議論が行われていた。

議論の内容を読みたい方は下記のアドレスでダウンロードできます。

http://news.sbs.com.au/insight/trans.php?transid=998


オーストラリアは世界で最初に積極的安楽死を合法化した。
Rights of the Terminally Ill Act 1995

1995年、ノーザンテリトリーの議会は、医師による末期患者の自殺幇助を容認する法案を可決し、1996年、7月この法は発効された。

この法の下で4人の末期がん患者がDr Philip Nitschkeの幇助で自殺した。
しかし、1997年、連邦政府はこの法を無効化する法案を可決し、オーストラリアでは現在積極的安楽死は違法である。



あれから、丁度10年、オーストラリアでは、積極的安楽死を認めるべきだという声は、前にもまして大きくなっているようだ。

SBS
による世論調査では85%の人が、積極的安楽死を認めるべきだと答えている。
SBS
の世論調査はOnlineによる世論調査で信憑性は低いが、Morgan Poll Australiaによる無作為に対象を選んだ世論調査によっても似たような結果が出ている。


番組では、さまざまな分野からの人から、積極的安楽死をサポートする、或いは反対する議論が繰り広げられた。


オーストラリアの医師、Dr John Elliot、彼は末期の前立腺がんで、痛みと苦しみの中での死に尊厳はない、これ以上妻の負担にはなりたくない、人間は生きているときと同様に、死ぬことにおいてもコントロールと責任を持つ事を許されるべきだ、自分の最後は自分で選択したいと、スイスの外国人に対してもサービスを提供しているDignitasで積極的安楽死による自殺死を選んだ。

番組では、彼の最後のメッセージを読む姿のビデオ画像が公開され、奥さんも、番組に出演し、少しも後悔はないと語った。


Dr Philip Nitschke
は積極的安楽死の活動家である。

彼はノーザンテリトリーの自殺幇助で、Death Doctor(死の医師)として有名になり、法律が無効になってからはExit Internationalという組織を作り、各地でワークショップを開き、如何にして確実に楽に自殺をするかの情報を提供している。http://www.exitinternational.net/


彼は、こうした情報を書いたThe Peaceful Pill Handbookという本も出版したが、この本はオーストラリア国内では出版と販売を禁止された。

しかし、彼は最近、GoogleOnlineでこの本にアクセスできる契約を結んだとのことである。

彼のワークショップ、支持者には高齢の人が多い。
この国で積極的安楽死が再び合法化されるのを待ってはいられない、誰でもが安楽死のためにスイスに行く経済力があるわけではない、だから自分は情報の提供を続けるのだと...


番組には彼の支持者の顔も多く見られた。

そのうちの一人の女性は、彼の本のアドバイスの一つに従い、メキシコに行って、致死量のネンビュタールを購入してきたと
又、ある出演者のご主人は末期がんで、ある日、奥さんと愛犬を口実を作って家から出し、留守中に一人でDr Philip Nitschkeのアドバイスの一つであるプラスティックバッグをかぶって自殺をした。


Lesley Martin
はニュージーランドで積極的安楽死を合法化しようとする活動家である。

http://www.dignitynz.co.nz/



彼女はICUで長く働いていたナース、末期の大腸がんの母親の死を長引かせないでとの願いを受け入れ、ホスピス入院中の母親に60mgのモルヒネを二回に分けて投与した。

彼女の母親は、その直後に死亡したわけではなく、翌日に死亡した。



医師とホスピスは彼女を警察に通報、その結果彼女は10ヶ月にわたる殺人容疑による取調べを受け、結果は不起訴となった。

この後、彼女はニュージーランドのおける積極的安楽死の議論を巻き起こす目的であえて自分の経験を書いて出版した。



To Die Like A Dog – the personal face of the euthanasia debate

この出版で警察は再び彼女を逮捕、殺人容疑で起訴され、15年の禁固刑の判決を受け、執行猶予で実際は7ヵ月半刑務所に入った。

彼女らの主張は、末期の疾患で苦しむ人たちが、いつどのようにその苦しみを終わりにするのか選択する権利を法で認めるべきだ、積極的安楽死を合法化するべきであるというものである。


Dr Rodney Syme
Dying with Dignity Victoria(ビクトリア尊厳死協会)の副議長である。

http://www.dwdv.org.au/Home.html


彼は、これまで30年間、自分は多くの患者さんの死を助けてきた。

1988年以降、オーストラリアで行われた数々の調査によれば、11から30%の医師やナースが、かつて意図的に死の時期を早める目的で何らかの行為を行った事があると

そして彼はスティーブの例を話した。

彼は食道がんで、口からは何も食べれず、胃に直接挿入したチューブによって栄養摂取していたがやせこけて、もうこの苦しみを終わらせたいとDr Symeのもとにやってきた。


Dr Syme
は緩和ケアに行く事を勧め、セデーションをしてもらえれれば、最後の苦しみも和らげられるだろうと話したが、スティーブはそれを拒否し、自分でコントロールできる道を望んだ。
そこで、Dr Symeは彼にバービチュレイトの情報を与えた、どれ位服用すればいいのか、どのように服用すればいいのか、その後どんな事が起こるか等々...

スティーブはこの後、与えられた情報を使って自殺するまでの2週間、リラックスし、不安や恐怖もなくなり、精力的に尊厳死の活動にも参加し、2週間後、自宅で家族に囲まれて亡くなった、誰もが、このような最後を迎えたいだろうと思うと...


彼は積極的安楽死が合法化されることで、誰もが安易にそれを望むという事はない。

実際、アメリカのオレゴン州では、医師が一定の条件にかなう末期患者には致死量のネンビュタールを処方する事が法で認められているが、処方箋を受け取ったものの40%はそれを使わないままに終わっていると...

積極的安楽死を認めるべきであるという人たちの主張の根幹は、選択の自由は民主主義社会における人間の基本的権利である、末期の状態で、自分にとっての尊厳のある死を選ぶ権利は認められるべきであるというものである。

多くの活動家は、緩和ケアを否定するものではない、むしろ、その必要性は充分に認識しているように思われるが、例え、適切な緩和ケアがあっても、痛みや苦しみ、自分のやりたいこともできず、家族や他者に依存して生きるよりは、尊厳ある死に方を選びたい、その権利があるはずだということに尽きるようだ。

積極的安楽死に反対する立場としては、

連邦政府の高齢者対策大臣、Christopher Pine
緩和ケアオーストラリアの議長、Margret O’Connor,
カトリックの生命倫理学の専門家で、連邦政府の医療倫理のコンサルタントの一人でもあるDr Nicholas Tonti-Filippini

以上
が発言したが、バランスとしては、反対側は非常に短時間しか与えられず、Pine大臣は、一番多く喋ったものの、議会で何度も討論されたが、連邦政府も各州政府も積極的安楽死の合法化には反対である、緩和ケアをもっと推し進める方向であると繰り返すばかりで効果的なディベートをする事はできなかった。



クイーンズランドにあるホスピスの取材の映像が公開され、患者さんや家族のインタビューもあったが、全体として、緩和ケアで働く者としては、非常に不消化な思いの残る番組であった。


積極的安楽死、医師による末期患者の自殺幇助を合法化に関する議論は、今後も高まりこそすれ、消えていく事はないと思う。



ノーザンテリトリーは準州で、議会も一院制、そのために、一旦通過した法案が連邦政府によって無効にされるという結果になったが、以後、他の州政府で同様の法案を提出する動きは続いており、可決されれば、一つの州政府の決定を連邦政府が無効にする事は困難であり、いずれ、どこかの州で可決される可能性は大きい。


今後もオーストラリアでの動きを伝えていきたいと思っている。

又、緩和ケアの現場で働いているものとしての感想などもいつかまとめてみたいと思っている。


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コメント

SKさん、
経営の視点からのコメント、大歓迎です。楽しみにしています。そのためには、私がもっとがんばってBlogの更新をしなくては…。

投稿: Hana | 2008年11月30日 (日) 23時14分

初めまして。Hanaさんのブログを興味深く読ませて頂いております。

いきなり自己紹介させて頂く失礼をお許しください。私はMonashでMBAとHealth Service Managementの修士課程で学ぶ学生です。

MBAが一段落し、来年3月からOff-CampusではありますがAlfred Hospitalでの勉強が主になります。今後、経営の視点からのコメントを寄せさせて頂きたいと考えております。宜しくお願いいたします。

投稿: SK | 2008年11月28日 (金) 20時06分

aruga先生、コメントありがとうございました。又頑張って色々な情報を載せていきたいと思っています。
先生は私よりもずっとお忙しいだろうに、すごいですね。ほぼ毎日更新!いつも読ませていただいてます。これからもよろしくお願いします。

投稿: Hana | 2007年4月21日 (土) 22時16分

こんにちは。国内では、終末期ガイドライン暫定版に対するパブリックコメントを3月末まで募集していました。こうした中にも、一般の方から安楽死を肯定的に求める意見もあったのだろうと思っていますが、日本でこれが議論のテーブルにのることは当分ないだろうと思っています。また、状況を是非教えてください。

投稿: aruga | 2007年4月21日 (土) 09時48分

hanaさん、初めまして。ピッツバーグで内科研修しています、tanuです。TBありがとうございます。(お返しにTBしてしまいました(^o^))。
積極的安楽死は自己決定権との絡みもあって、どこの国でも難しいテーマのようですね。オーストラリアの話、大変興味深く読ませていただきました。これからも楽しみにしています。

投稿: tanu | 2007年4月12日 (木) 07時18分

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