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緩和ケアにおける栄養と水分

食と命は密接につながっている。
だから、患者さんが食べられなくなると、家族は、このままでは死んでしまうとパニックに近い反応を示す事が多い。

“点滴をしてください!”
“何とかして食べさせて!”
“病気のせいじゃなくて、飢え死にしてしまう!


中には、うつらうつらしている患者さんを無理矢理起こして、食べ物を口の中に押し込もうとする家族もいる。
嚥下機能が低下している患者さんに、無理矢理食べ物を口に押し込めば誤嚥して肺炎を起こす危険がある。

緩和ケアでは、食事と水分の補給に関して、とにかく辛抱強く、家族を教育していく事が何より大事な事になる。

食事が食べられなくなる、水分も取れなくなるというのは死に至る自然な過程だということ
食事は患者さんが食べたいと思うものを、食べたいと思うときに、食べたい量だけを
患者さんが楽しんで食べられるという事が一番大事なこと
水分は少しずつ頻繁にすすめるように
死が近くなったとき、身体はそれほど栄養を求めないし、飢餓感もないのだということ
無理に食べさせれば嘔気や嘔吐を引き起こしたり、誤嚥性肺炎を起こして反って患者さんを苦しめる事になるのだということ

オーストラリアでは病院食でも前日に自分の食べたいものをメニューから選ぶシステムになっている。
嚥下機能が低下している人には、やわらかいものや、すりつぶした状態の食事、飲みやすいようにとろみをつけたスープや飲み物を提供する。

患者さんの中には、頑固に、普通の形のある食事、一杯の熱いお茶が飲みたいのだという人もいる。
嚥下機能の専門家のSpeech pathologistが説明しても、リスクを承知した上で、一杯の熱いお茶を飲みたいのだという人には、勿論、患者さんの意思を尊重して、自由に飲みたいものを飲んでもらう。

食べなれた家庭の味なら食べれる人もいるから、キッチンも完備しているので、家族の持って来たスープを温めてすすめることもできる。
患者さんが飲めるならば栄養のバランスのいいサプリメントをすすめる。家のユニットでは夕食前にはドリンクを乗せたワゴンが回ってきて、ワインやビールなどのアルコール飲料も欲しい人には提供する。

食べたくないという人に無理矢理すすめる事はしない。
水分はこまめに一口ずつでも飲めるならばすすめる。

殆ど食べられなくなって、水分もあまり取れなくなるという事は死が近づいているという一つの指標になる。
IVHとか経管栄養を開始するという事は全くない。

どのステージでも口腔内のケアは必須である。
やわらかい歯ブラシで、或いは綿棒で定期的に口腔内をきれいにする。
義歯があれば必ず取り出してきれいにする。
さまざまな口腔ケア用の薬品があるが、口内炎がなければ、薬品を使う必要はなく、水でも充分、とにかく頻繁に口腔のケアをするということが大事との
研究結果が報告されている。
口腔内、口唇をいつも潤った状態に保つ事で口渇もおさえられる。


輸液をする事が患者さんの安楽につながる可能性があるならば稀にすることもある。
家族の懇願で試験的に輸液を試みる事もある。

生理食塩水を500ml、或いは1000ml、ルートは皮下中で夜間にゆっくりとか、一日かけて投与する。
日本では経験がなかったので、皮下輸液では点滴が漏れるようなもので痛いのではないだろうかと感じたが、痛みを訴えた人はいない。
翼状針を腹部に固定して行う。
静脈のルートと違って、患者さんの動きを制限する必要ない。


(緩和ケアではイギリス、カナダ、アメリカ等、どこでも殆どの注射による薬剤の投与は皮下注射で行っているが、効果には差がないことが確認されている。)


患者さんの呼吸音が少しでもぜいぜいし始めたら、家族にこのまま続ければ反って呼吸を苦しくする事になるからと説明して、ナースの判断で中止する。
家族も目の前で証拠を見ると納得する事が多い。

緩和ケアユニットに入院している患者さんの家族は、患者さんの死が間近に迫っているということは理解しているが、死に至る過程で、食事も水分もだんだんと取れなくなる、それが自然の過程であるということをすんなりと受け止められる人はあまりいない。

家族の気持ちを考慮しながら辛抱強く教育していくことは、時間もかかるし、動揺した家族にナースが怠慢で患者さんに食事を食べさせないように言われたりする事もざらで、精神的エネルギーも必要になってくる。

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コメント

日本で緩和ケアをしている者です。皮下輸液で
検索してここに来ました。病棟で皮下輸液の指示
を何度か出した事がありますが、病棟の看護師
からは、皮下では1日せいぜい300mlが限界、
穿刺部位が腫れるので毎日差し替えが必要、と
私が学んだ皮下注射とはだいぶ違いを感じて
います。日本での輸液のガイドラインでも、1日
1000mlくらいは問題なさそうなのですが。
もちろん、終末期の輸液が不適切な場合も多い
事は承知で、過剰な輸液をするつもりはない
のですが・・・300mlが限界というのは違和感が
あります。

そこで質問なのですが、穿刺部位は主に腹部に
していますか?うちの病棟では四肢に刺す事が
多く、これがひとつの原因のような気がして
います。ご意見頂けますか?

>>>>>
ご推察のとおり、私たちは皮下輸液の場合はよほどの事情がない限り腹部を選びます。前に、新人のスタッフが上腕部に行ったところ腕が倍以上に腫れてしまいました。
腹部でも腫れがひどくなったり、針の刺入部の皮膚が白っぽく変色したりすればちょっと休んだり、或いは中止します。場所を変えることもあります。また、腹部左右に翼状針を留置し、交替で使うこともあります。
針はSaf-T-Intima 20G 黄色のものを使っています。
http://www.bd.com/infusion/products/sti.asp
金属の翼状針だと、患者さんが痛みも感じるし、針のもちも短いようです。 Hana


穿刺は毎日行うものですか?
末梢と同じくらい留置出来るという文章を見て
いますが、実際はいかがでしょうか。

>>>>>
針の刺入部は4時間ごとにチェックし、異常があれば変更します。殆どの人が1週間ほど持ちます。 Hana


よろしければ教えて下さい。

>>>>>
http://www.palliativedrugs.com/
こちらで登録して掲示板Bulletin Boardに行き、Subcutaneous fluidsで検索すれば、世界中の緩和医療者の情報がわかります。

http://www.palliative.org/PC/ClinicalInfo/ACB%20PC%20resource%20manual.pdf
カナダのアルバータホスピスリゾースマニュアルの47ページに皮下輸液のガイドラインが載っています。ご参照ください。

お役に立てば幸いです。 Hana

投稿: Blue | 2008年6月13日 (金) 08時50分

Hi様
イギリスの状況を教えていただいてありがとうございました。
皮下輸液は患者さんのQOLを考えたとき、メリットが多いですよね。拘束されない、簡単に接続をはずしたり、つないだりできる、刺入部に問題が出ればナースがすぐに差し替えができる等々

投稿: Hana | 2007年5月11日 (金) 07時53分

皮下への輸液ははじめは私も痛くないのかと心配でしたけど、不快を訴える人はほとんどいませんでした。IVよりも拘束されることも無いし、血管からもれる心配も無いのでイギリスでも在宅やホスピスで結構行われています。
こちらのテキストブックに最大生食3リットルまで皮下への輸液はOKと書いてあってビックリでしたが。
実際ホスピスでは1リットル位しか投与しませんけど。

食べることに執着している家族とのかかわりは難しいですよね。私もアジア系の患者さんの家族はその傾向が強い気がします。

投稿: H i | 2007年5月11日 (金) 07時35分

tanu様、
食べれば良くなるという信念は、ギリシャ系、イタリア系、そしてアジア系全部に強くあるように思います。文化的特徴ともいえるかと思います。

投稿: Hana | 2007年5月11日 (金) 05時54分

こんにちは。Hanaさん、興味深い記事をありがとうございます。
嚥下機能が落ちている患者さんに家族が無理に食事を取らせようとして、誤嚥性肺炎を起こしたという経験が僕はあります。食べれば良くなる、というとても強い信念を家族の方が持っており、毎日のように話し合いをしていたのですが、十分に理解されていなかったようです。家族教育の重要さは理解していますが、とても難しいですね。ご家族の信念体系が、医療行為に馴染まない時もあるように思います。

投稿: tanu | 2007年5月10日 (木) 14時13分

よっしい様
コメントありがとうございました。
早速リンクさせていただきます。これからもよろしくお願いします。

投稿: Hana | 2007年5月 9日 (水) 01時59分

aruga様
日本では緩和ケアの分野でもあまり皮下輸液をおこなっているところはないようですね。

投稿: Hana | 2007年5月 9日 (水) 01時47分

初めまして、皮下輸液の実際を教えていただきありがとうございます。うちの病院でも、医師、看護師に教育し広めていきたいと思います。
もちろん、リンク大歓迎です。こちらも、リンク貼らせていただきますね。
こんど、時間のあるときにBlogじっくり読ませていただきます。

投稿: よっしぃ | 2007年5月 9日 (水) 01時17分

こんにちは。8年程前カナダで研修したとき、皮下輸液を見て、前時代的ながら何とも生理的なものかと驚きました。さらに驚いたことに、そうした文献を読んだ日本の在宅医が、ところどころで在宅患者さんに皮下輸液を行っていました。

投稿: aruga | 2007年5月 9日 (水) 00時14分

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